……断る。
ちょ、野本さんっ！ そんな即答しなくてもいいじゃないですか……！
人のプライバシーを覗き見るのがそんなに楽しいか？ 申し訳ないが、お前らと違って、私にそういう趣味はない。
そんなこと言いながら、ちゃんとこの部屋に来てるってことはだ。 ちょっとは興味あるってことなんじゃないか～？ 野本先生っ！
！？ 樫井っ！？ お前、なんでここにいるんだ……！？
いやー本編じゃお互い、やり取りすることなかったからな。 ゆっくり話がしたくて待ってたんだよ。なっはっは！
話すことなど、こっちには何もな……っ肩を組むな！ 触るな！
まあまあ、そう言うなってー！
（あの野本さんにここまでできるなんて、さすが正博さん……）
さて！ それで肝心な質問の回答だ。 んー。俺も野本とは仕事場で会うことが多かったからなあ。
なんでお前が答えてるんだ……。
驚くことに、広恵ちゃんの方がべったりだったんだよなー。 あんな若くて美人な子が、他の男にゃ目もくれず、野本一筋 だぜ？ 一体どんな手を使ったんだって感じだよな。
ま！ 教師と生徒が結ばれて夫婦にまでなってんだ。 人には言えねえようないろんなことがあったんだろうけどなあ？
で、そこんとこどうなんだー？
…………。
あ、えっと、野本さん……その、実は
幸せだった頃……か。 確かに広恵と過ごした時間は、私にとって、確かにそこに存在した 『幸せ』と呼ぶに相応しいものだったと言えるだろう。
だがその記憶や思い出というものは、人に与えるものとは違う。 幸せだった過去も、些細な感情や言葉、そして未熟だった私の姿も それはすべて私と広恵のものだ。他の人間が知る必要はどこにもない。
これが私の答えだ。……不服か？
……用は済んだ。帰る。
えっ！ あっ！ の、野本さん！！！ まだ話はとちゅ……
あーらら。行っちまったなー。 いわゆる照れ隠しってやつなんだよ。許してやってくれ。
いつも以上にぐだぐだに終わってしまいましたが……。 仕方ないですね。
って、そういや先生、さっき野本に何か言いかけてなかったか？
あ、ああ、いえ。実は今回の質問に際して 教師をしていた頃の野本さんと広恵さんの写真 を手に入れたので お渡ししようと思ったんですが……。
おおっ！ そんなもん持ってるなんてさすが記者様だな！ あー。でも、あのお堅い性格じゃ素直には受け取らねえだろうなー。 俺で良ければあとで渡しておくぜ。
あはは……ありがとうございます。それじゃ、お願いします。
おうよ！
